その他の糖尿病
その他の糖尿病

糖尿病(ダイアベティス)と聞くと、1型・2型、あるいは妊娠糖尿病を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし実際には、これら以外にもさまざまな原因によって発症する糖尿病が存在します。これらは「二次性糖尿病」や「特定の機序・疾患による糖尿病」と分類され、原因疾患の診断と治療が不可欠です。ここでは、当院で診療を行っている代表的な「その他の糖尿病」についてご紹介します。
膵性糖尿病は、慢性膵炎や膵がん、膵臓の手術後などにより膵臓の機能が低下し、インスリンの分泌が不十分になることで発症します。膵臓は血糖をコントロールする重要な内分泌器官であると同時に、消化酵素も分泌しています。そのため、膵性糖尿病では血糖コントロールが難しいだけでなく、消化機能の低下による栄養不良や体重減少も見られます。また、グルカゴンという血糖を上げるホルモンの分泌も低下するため、低血糖を起こしやすいことも特徴のひとつです。治療にはインスリン療法に加え、膵外分泌不全への対応(消化酵素補充など)も必要になります。アルコール性慢性膵炎や膵手術歴のある方は、定期的なフォローに加えて、血糖管理が欠かせません。
MODY(若年発症成人型糖尿病)は、特定の遺伝子変異によって発症する糖尿病で、多くは若年(通常25歳未満)で発症し、家族歴が多い点が特徴です。1型や2型と誤認されやすいですが、MODYの一部は経口薬が有効で、インスリンを使用しない治療が可能な場合もあります。診断には遺伝子検査が必要ですが、早期に正しく診断できれば、適切な治療につなげることができます。疑わしい場合は、大学病院へ紹介します。ミトコンドリアとは、糖や脂質をATPというエネルギーに変える細胞内器官ですが、ミトコンドリア自体の遺伝子変異により、ミトコンドリアの機能が低下し、糖尿病を発症する場合があります。有名なものだとMELASといって、脳卒中や乳酸アシドーシスを併発する場合もありますが、症状の出方は人それぞれですので、疑う場合は当院での遺伝子検査を行うことが可能です(ミトコンドリア遺伝子3243点突然変異。自費になります)。また、染色体異常による糖尿病もあり、ダウン症候群やターナー症候群、フラジールX症候群などで見られることがあります。これらは発達障害や内分泌異常を伴うこともあり、包括的な医療支援が求められます。
副腎皮質ホルモンが過剰になるクッシング症候群や、甲状腺ホルモンの過剰な分泌が見られるバセドウ病(甲状腺機能亢進症)、カテコラミンの異常分泌がある褐色細胞腫などでは、ホルモンの影響によってインスリンの効果が弱まり、糖尿病を引き起こすことがあります。これらは「内分泌性糖尿病」として分類されます。糖尿病の治療だけでなく、基礎にあるホルモン異常に対しての治療(例:手術、薬物療法)が必要となります。特に急激な血糖上昇や、体重変動、筋力低下、高血圧などの症状を伴う場合は、こうした内分泌疾患の可能性も疑われます。専門的な内分泌検査と対応が重要です。
特定の薬剤の使用により糖尿病を発症することがあり、これを「薬剤性糖尿病」と呼びます。代表的なものとしては、副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)、免疫抑制剤、インターフェロン製剤、抗がん剤、利尿薬などがあります。これらの薬剤は、インスリンの分泌や作用を妨げることにより血糖値を上昇させる可能性があります。とくにステロイドは、関節リウマチや喘息、自己免疫疾患などで広く用いられているため、ステロイド使用中の患者さんでは、定期的な血糖モニタリングが不可欠です。ホルモンの日内変動の関係で、朝にプレドニンなどを多く内服することが多く、初期には、夕食前ごろから血糖値が上昇し、朝前には正常に戻っている場合が多いです。
また、オプジーボ🄬などの抗がん剤(免疫チェックポイント阻害薬)で劇症1型糖尿病を発症するケースもございます。中止可能な薬剤であれば中止して経過を見ますが、薬剤の使用が不可避な場合でも、食事療法・運動療法・薬物療法を組み合わせることで血糖コントロールは可能です。
自己免疫性膵炎は、膵臓に自己免疫反応が起こることで炎症をきたす病気で、しばしば糖尿病を合併します。初期には膵炎の症状が目立たない場合もありますが、慢性的に進行すると膵臓の機能低下を引き起こし、インスリン分泌が不十分となることで糖尿病を発症します。ステロイド治療が有効なこともありますが、膵機能の改善と同時に血糖管理も必要です。治療によって一時的に血糖値が改善することもありますが、膵臓のダメージの程度により、慢性的にインスリンが必要になるケースもあります。炎症により特徴的な膵臓の腫大や膵管の異常が見られることがあり、エコーやCT、MRIなどの画像診断やIgG1・IgGなどの血液検査を組み合わせて診断します。早期発見・早期治療により、膵炎と糖尿病の進行を抑えることができます。当院でも腹部エコー、血液検査を施行可能で、疑わしい場合は大学病院へ紹介いたします。
近年、新型コロナウイルス(COVID-19)感染後に糖尿病を発症したという報告が増えています。ウイルスが膵臓のインスリン分泌細胞に直接影響を与えることや、全身の炎症反応によりインスリン抵抗性が高まることが原因とされています。重症化した症例では、ステロイド治療の影響も加わり、高血糖を引き起こすことがあります。また、既存の糖尿病が悪化するケースも多く報告されています。COVID-19罹患後に体重減少や多飲・多尿・倦怠感などの症状が現れた場合は、血糖検査を行い、早期に診断・治療することが大切です。感染症と糖尿病の関連性は今後さらに研究が進む分野でもあります。
ご自身の糖尿病がどのタイプか明確でない場合や、通常の治療でうまく血糖コントロールができない場合は、これらの「その他の糖尿病」の可能性も考えられます。当院では、各疾患の背景にある原因を丁寧に調べ、適切な診断と治療をご提供いたします。糖尿病の診療に不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
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