2026年7月29日
2型糖尿病の治療で、食事や運動を続けても血糖値が目標に届かず、悩んでいませんか。この記事では、比較的新しい糖尿病治療薬「マンジャロ」について、効果の仕組みから副作用、使い方、費用までをわかりやすく解説します。
マンジャロがどのような薬かを正しく理解し、ご自身の治療の選択肢として医師に相談するための一歩にしてください。なお、マンジャロは医師の診察と処方が必要な医療用医薬品です。
マンジャロとは?
マンジャロ(一般名:チルゼパチド)は、2型糖尿病の治療に用いる、週に1回自分で注射するタイプの薬です。有効成分は「チルゼパチド」で、血糖値をコントロールする働きがあります。(※1)
「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬」という仕組みを持ち、血糖値の改善に加えて、食欲に働きかけて体重を減らす作用もあります。ただし、医師の診断と処方がなければ使えない医療用医薬品です。
2型糖尿病の治療に使う注射薬
マンジャロは、食事や運動といった生活習慣の見直しだけでは血糖コントロールが不十分な「2型糖尿病」の方に使われる注射薬です。(※1)
インスリン注射が、不足したインスリンを外から補う薬であるのに対し、マンジャロはご自身の体からインスリンを出しやすくする薬で、作用の仕組みが異なります。治療は、週に1回、決まった曜日に皮下注射を行います。
GIP/GLP-1受容体作動薬という仕組み
マンジャロは、「GIP」と「GLP-1」という2つのホルモンに働きかける薬です。どちらも食事をとった際に小腸から分泌され、血糖値を下げるために重要な役割を担うホルモンです。(※2)マンジャロの主な作用は、次のとおりです。
- 血糖値が高いときに、すい臓に働きかけてインスリンの分泌を促す
- 胃の動きをゆるやかにして、食後の血糖値の急な上昇を抑える
- 脳(視床下部)に働きかけて食欲を抑える
これまでの薬はGLP-1のみに作用するものが中心でしたが、マンジャロはGIPにも作用する点が特徴です。
医師の処方が必要な薬
マンジャロは、薬局やインターネット通販で自由に手に入れられる薬ではなく、必ず医師の診察と処方が必要な医療用医薬品です。少量から始めて体の状態を見ながら量を調整し、副作用に対応する必要があるため、専門家による管理が欠かせません。自己判断での使用は避け、必ず医療機関を受診してください。
マンジャロの主な効果

マンジャロには、主に「血糖値を下げる効果」と「体重を減らす作用」があります。GIPとGLP-1という2つのホルモンに働きかける仕組みによるものです。(※2)本来の目的は2型糖尿病の治療であり、効果のあらわれ方には個人差があります。
血糖値を下げる
マンジャロは、血糖値に応じてインスリンの分泌を促し、血糖コントロールを改善します。血糖値が高いときにだけすい臓に働きかけるため、血糖値が下がりすぎるリスクを抑えながら、食後の急な上昇を穏やかにできます。主な仕組みは次の2つです。
- インスリン分泌の促進:血糖値が高いときに、ご自身の体からインスリンを出す力を引き出す
- グルカゴン分泌の抑制:血糖値を上げるホルモンの分泌を抑える
多くの2型糖尿病の方は、治療目標の血糖値の達成が難しいのが現状です。(※3)マンジャロは、そうした場合の選択肢の一つになります。効果を引き出すには、食事や運動の見直しを並行することが基本です。
体重減少がみられることがある
マンジャロには、体重が減る作用もあります。脳に働きかけて満腹感を得やすくし、胃の動きをゆるやかにして空腹を感じにくくすることで、食事量が自然に減るためと考えられています。
ただし、これはあくまで2型糖尿病治療の一環でみられる作用です。日本では「肥満症」の治療薬としては承認されておらず、ダイエットだけを目的に使う薬ではありません。
マンジャロの主な副作用と注意点

マンジャロは効果が期待できる一方、副作用が起こることがあります。特に治療の開始時や薬の量を増やす時期には、お腹の症状が出やすくなります。(※1)どのような症状があるかを知り、慌てず対応できるようにしておきましょう。
よくある消化器症状(吐き気・下痢・便秘)
比較的多くみられるのが、吐き気、下痢、便秘といったお腹の症状です。マンジャロが胃の動きをゆるやかにする作用が関係しています。多くの場合、治療を始めた時期や量を増やしたときに現れやすく、体が薬に慣れるにつれて軽くなります。次のような工夫で和らぐことがあります。
- 脂っこいものや刺激の強いものを避ける
- 一度にたくさん食べず、腹八分目を心がける
- ゆっくり、よく噛んで食べる
症状が長引いたり、生活に影響が出たりする場合は、我慢せず医師や薬剤師に相談してください。
注意したい重い副作用(低血糖・急性膵炎など)
頻度はまれですが、注意すべき重い副作用も報告されています。代表的なものと初期症状を下表にまとめました。(※1)
| 副作用 | 主な症状 | 注意点 |
|---|---|---|
| 低血糖 | 冷や汗、動悸、ふるえ、強い空腹感 | ・他の糖尿病薬(SU薬・インスリン)との併用で起こりやすい ・症状が出たらすぐブドウ糖や糖分を摂る |
| 急性膵炎 | みぞおち〜背中の激しい腹痛、嘔吐 | すぐに医療機関を受診する |
| 胆石症・胆嚢炎 | 右上腹部の痛み、発熱、黄疸 | 体重減少に伴い起こりやすくなることがある |
| 腸閉塞 | 激しい腹痛、お腹の張り、便やガスが出ない | 速やかに受診する |
いつもと違う強い症状を感じたら、自己判断で様子を見ず、速やかに医師に連絡するか医療機関を受診してください。
甲状腺への注意点
治療を始める前に、甲状腺の病気の有無や家族歴を医師に伝える必要があります。動物実験で、成分と甲状腺の腫瘍との関連が報告されているためです。(※1)ヒトに当てはまるかは明らかになっていませんが、安全のために注意が促されています。
特に、ご自身や家族が「甲状腺髄様癌」にかかったことがある方、「多発性内分泌腫瘍症2型」の診断を受けた方は、必ず事前に申し出てください。治療開始後に首のしこり・腫れ、声のかすれ、飲み込みにくさが続く場合も、速やかに相談しましょう。
マンジャロの使い方(医師の指示のもとで)
マンジャロの治療は、医師の計画のもとで行うことが大前提です。投与量や開始のタイミングは、血糖値や体の状態に合わせて医師が判断します。(※1)自己判断で量を変えたり中止したりすることは、思わぬ体調の変化を招くため避けてください。
週1回の自己注射
マンジャロは、週に1回、決まった曜日にご自身で皮下に注射します。毎週同じ曜日に打つことで、薬の濃度を一定に保ちます。「アテオス」という使い捨てのペン型注入器を使い、簡単な操作で注射できます。注射する場所は、お腹・太もも・二の腕などの脂肪の多い部位を選び、毎回少しずつずらして打ちます。
初めての注射のときは、医療機関で医師や看護師から使い方の指導を受けますので、手順をしっかり確認してください。
打ち忘れたときの対応
注射を忘れた場合は、次の予定日までの残り時間で対応が変わります。慌てて2回分を一度に打つことは、副作用のリスクを高めるため絶対に行わないでください。(※1)
| 次の予定日までの期間 | 対応 |
|---|---|
| 3日(72時間)以上ある | 気づいた時点で1回分を注射し、その後は元の曜日に戻す |
| 3日(72時間)未満 | 忘れた分は打たず、次の予定日に1回分を注射する |
注射する曜日を変えたい場合は、最後の注射から3日以上あけます。迷ったときは、自己判断せず医師や薬剤師に相談してください。
保管方法
マンジャロは温度にデリケートな薬のため、正しい保管が欠かせません。(※1)
- 凍らせると使えなくなるため、冷凍庫や冷気の吹き出し口の近くは避け、冷蔵庫(2〜8℃)で保管する
- 光を避け、使う直前まで箱から出さない
- やむを得ず室温(30℃以下)で保管する場合は21日以内に使い切る
- 小さなお子さんやペットの手が届かない場所に置く
持ち運ぶ際の方法は、事前に医師や薬剤師に確認しておくと安心です。
マンジャロで治療を受けられる人
マンジャロは、医師が「2型糖尿病の治療に必要」と判断した方が使用できる医療用医薬品です。健康状態によっては使用できなかったり、注意が必要だったりするため、診察時は過去の病気や現在の体調を正確に医師へ伝えてください。
医師が必要と判断した2型糖尿病の方
マンジャロは、食事や運動だけでは血糖コントロールが不十分な2型糖尿病の方に処方されます。(※3)次のような場合に、医師が処方を検討します。
- 食事療法や運動療法を続けても、血糖値が十分に下がらない
- 他の糖尿病薬を使っても、血糖コントロールの目標を達成できていない
治療を始めるかは、血液検査(HbA1cなど)の結果をもとに医師が総合的に判断します。治療の基本は食事療法と運動療法であり、マンジャロはその効果を高める選択肢の一つです。
使用できない・注意が必要な人(禁忌)
安全に使うため、使用できない方(禁忌)や慎重な投与が必要な方が定められています。(※1)ご自身の病気やアレルギー歴は、診察時に必ず正確に伝えてください。
| 区分 | 対象となる方 |
|---|---|
| 使用できない(禁忌) |
・成分でアレルギーを起こしたことがある方 ・1型糖尿病の方 ・糖尿病ケトアシドーシス、重い感染症、手術前後など体が極度に消耗している方 |
| 注意が必要 |
・妊娠・授乳中、妊娠を希望する方 ・過去に膵炎になったことがある方 ・胆石症・胆嚢炎のある方 ・重い胃腸の障害がある方 ・SU薬やインスリンを使用中の方 ・甲状腺髄様癌の既往・家族歴がある方 |
他のGLP-1受容体作動薬との違い
マンジャロと、オゼンピックやリベルサスに代表されるGLP-1受容体作動薬との違いは、作用するホルモンの数です。これは優劣ではなく、それぞれ得意分野が異なるため、医師が一人ひとりに合った薬を選びます。
作用の仕組みの違い(GIPの有無)
従来のGLP-1受容体作動薬が「GLP-1」の1種類に作用するのに対し、マンジャロは「GLP-1」に加えて「GIP」にも働きかける点が特徴です。(※2)2つのホルモンに作用しますが、どちらがよいかは体の状態や生活スタイルによって異なります。
剤形・使い方の違い
薬の効き方だけでなく、使い方(剤形)も薬を選ぶ大切なポイントです。代表的なGLP-1関連薬の使い方を下表にまとめました。
| 薬剤名の例 | 使い方 | 頻度 |
|---|---|---|
| マンジャロ | 自己注射 | 週1回 |
| オゼンピック | 自己注射 | 週1回 |
| ビクトーザ | 自己注射 | 毎日1回 |
| リベルサス | 飲み薬 | 毎日1回 |
注射に抵抗がある方には飲み薬、毎日の投与が負担な方には週1回の注射というように、医師は効果や副作用に加えて生活スタイルも踏まえて治療法を提案します。
マンジャロの費用と保険適用
マンジャロの費用は、治療の目的によって異なります。2型糖尿病の治療として医師が処方する場合は「保険適用」、ダイエットなどの目的で使う場合は「自由診療(適応外)」となります。
2型糖尿病の治療は保険適用
医師が2型糖尿病の治療に必要と判断した場合、健康保険を使って処方を受けられます。自己負担は年齢や所得に応じて医療費全体の1〜3割です。3割負担の場合、薬剤費は用量にもよりますが1カ月あたりおおよそ4,600〜11,500円程度が目安で、別途、診察料や検査料がかかります。正確な費用は受診する医療機関にご確認ください。
肥満・ダイエット目的は適応外(自由診療)
2型糖尿病と診断されていない方が、肥満やダイエットの目的でマンジャロを使う場合は、保険が適用されず自由診療となります。日本では、マンジャロが2型糖尿病治療薬としてのみ承認されており、肥満症の治療薬としては認められていないためです。自由診療の費用は医療機関によって異なります。
治療を続ける・やめるときの考え方
マンジャロによる治療は、血糖値や体重、副作用の有無を見ながら医師と進めるものです。効果を実感しても、自己判断で注射をやめたり量を変えたりすると、かえって体調を崩すことがあります。治療のゴールは人によって異なるため、医師とよく話し合いましょう。
自己判断で中止しない
症状が落ち着いても、自己判断で中止してはいけません。2型糖尿病は自覚症状がなくても進行する慢性の病気で、血糖値が安定しているのは薬が効いているからです。(※3)中止すると、血糖コントロールが悪化したり、食欲が戻って体重が増えたりすることがあります。
やめたい、減らしたいと感じたときは、必ず理由を医師に相談してください。副作用がつらい場合も、量の調整などで続けられることがあります。
生活習慣の見直しも大切
治療の効果を引き出し、体重が戻るのを防ぐには、薬だけに頼らず生活習慣を見直すことが欠かせません。マンジャロは治療をスムーズに進めるサポート役です。この機会に、次のような点を意識してみましょう。
- 高たんぱく・低脂質を基本に、野菜など食物繊維から食べ、よく噛んで腹八分目にする
- ウォーキングなどの有酸素運動と、筋力トレーニングを習慣にする
安全に使うために|個人輸入の危険性

マンジャロを安全に使う方法は、医師の診察のもと、正規の医療機関で処方を受けることだけです。インターネット通販やSNSなどで個人的に入手することは、健康を脅かす深刻なリスクがあるため、絶対に避けてください。
正規でないルートで入手した薬には、次のような危険があります。
- 偽造薬:有効成分が入っていない、別の成分や有害な不純物が混入している
- 品質の劣化:厳格な温度管理(2〜8℃)が守られず、効果が失われたり有害物質に変化したりする恐れがある
- 重い健康被害:予期せぬアレルギー反応や臓器障害を招くことがある
- 公的救済の対象外:個人輸入した薬で健康被害が起きても、国の副作用被害救済制度は利用できない
マンジャロは、医師による管理が不可欠な薬です。ご自身の体を守るためにも、必ず正規の医療機関を受診し、医師の指導のもとで治療を始めましょう。
まとめ|マンジャロは医師と相談して使う薬
マンジャロは、2型糖尿病の治療に用いる新しいタイプの注射薬です。食事や運動、これまでの薬だけでは血糖コントロールが難しかった方にとって、有力な選択肢の一つになります。(※3)
血糖値を下げる働きに加えて体重を減らす作用もありますが、吐き気などの副作用や、まれに起こる重い副作用への対応が必要です。安全に使うには、医師による管理が欠かせません。特に、ダイエット目的で個人輸入などにより入手・使用することは、偽造薬や品質の劣化した薬による健康被害を招く恐れがあり、大変危険です。
ご自身の状態にこの治療が合っているかを知るためにも、まずは専門の医師に相談することから始めてみてください。
東坂戸クリニックでは、糖尿病専門医による診療に加え、管理栄養士や糖尿病療養指導士と連携したチーム医療を行っています。血糖値やHbA1cが気になる方、健診で異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). マンジャロ皮下注アテオス 添付文書. https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuDetail/ResultDataSetPDF/530471_2499422G1024_1_10
- Galindo RJ, Cheng AYY, Longuet C, Ai M, Coskun T, Malik R, Peleshok J, Levine JA, Dunn JP. Insights into the Mechanism of Action of Tirzepatide: A Narrative Review. Diabetes Therapy. 2026;17(1):19-40. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41196501/
- Gettman L. New Drug: Tirzepatide (Mounjaro™). The Senior Care Pharmacist. 2023;38(2):50-62. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36751934/
参考文献
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA). マンジャロ皮下注アテオス 添付文書.
- Rodolfo J Galindo, Alice Y Y Cheng, Christine Longuet, Minrong Ai, Tamer Coskun, Raleigh Malik, Jennifer Peleshok, Joshua A Levine, Julia P Dunn. Insights into the Mechanism of Action of Tirzepatide: A Narrative Review. Diabetes Therapy,2026,17,1,p.19-40.
- Lana Gettman. New Drug: Tirzepatide (Mounjaro™). The Senior Care Pharmacist,2023,38,2,p.50-62.