2026年7月29日
健康診断で「糖尿病の疑い」を指摘されたものの、自覚症状がないため「まだ大丈夫」と考えていませんか。
この記事では、血糖値やHbA1cなどの検査数値の見方と、糖尿病を放置した場合のリスクを解説します。あわせて、健康診断で糖尿病が疑われた場合に実施する検査や改善のために自分でできることも紹介します。
ご自身の体の状態を正しく理解し、合併症を防ぐために今何をすべきかを明確にしましょう。
健康診断で糖尿病はわかる?診断に利用される検査項目

健康診断の結果だけで、糖尿病と確定診断されるわけではありません。しかし、糖尿病が強く疑われるかどうかを判断し、早期発見につなげる重要な手がかりになります。
健康診断で用いられる代表的な検査項目は、以下の3つです。
- 空腹時血糖値
- 随時血糖値
- HbA1c
①空腹時血糖値
空腹時血糖値は、10時間以上食事を摂らない状態で測定した、血液中のブドウ糖濃度です。食事による一時的な血糖上昇の影響を受けないため、基礎的な血糖状態の評価に適しています。検査前日の夕食後から、水やお茶以外の飲食物は摂らずに採血します。
特定健診での数値の見方を以下の表にまとめました。
| 判定 | 空腹時血糖値 |
|---|---|
| 正常値 | 99mg/dL以下 |
| 要注意(境界型糖尿病) | 100〜109mg/dL |
| 異常(受診勧奨) | 110mg/dL以上 |
| 糖尿病型 | 126mg/dL以上 |
特に注意したいのが「要注意」と判定された場合です。研究では、空腹時血糖値が少し高い段階でも、糖尿病や心筋梗塞などを併発するリスクが、約2.8倍に高まると報告されています。(※1)
「まだ大丈夫」と自己判断せず、「要注意」の段階で生活習慣を見直しましょう。
②随時血糖値
随時血糖値とは、食事の時間とは関係なく、任意のタイミングで測定した血糖値です。食後など血糖値が上がりやすいタイミングで測定されることもあります。
健康な人でも食後は血糖値が上がります。しかし、インスリンというホルモンが正常に働いていれば、通常は一定の範囲内に収まり、速やかに元の値に戻ります。
食事のタイミングにかかわらず血糖値が200mg/dL以上ある場合は「糖尿病型」と判定されます。血糖値を下げるインスリンの働きがかなり弱っている可能性があり、糖尿病が強く疑われる状態です。
自覚症状がなくても放置せず、早めに医療機関を受診しましょう。
③HbA1c
HbA1cは、過去1〜2か月間の血糖値の平均的な状態を反映する指標です。
赤血球の中にあるヘモグロビンというたんぱく質には、血液中のブドウ糖と結びつく性質があります。HbA1cは、ブドウ糖と結びついたヘモグロビンの割合を示したものです。赤血球の寿命(約120日)に基づいているため、検査当日の食事や体調に左右されにくく、長期間の血糖コントロール状態を安定して評価できます。
数値の見方を以下の表にまとめました。
| 判定 | HbA1c |
|---|---|
| 正常域 | 5.5%以下 |
| 要注意 | 5.6〜6.4% |
| 糖尿病型 | 6.5%以上 |
HbA1cは糖尿病の診断だけでなく、治療を開始したあとの判定にも用いられます。健康診断では、血糖値とHbA1cの両方の結果から総合的に状態を判断します。
糖尿病を放置するリスク

高血糖の状態は、自覚症状がないまま全身の血管を傷つけていきます。自覚症状が現れたときには、病状がかなり進行しているケースも珍しくありません。糖尿病を放置すると、主に以下の2つのリスクが高まります。
- 三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)
- 心筋梗塞・脳梗塞
①三大合併症(神経障害・網膜症・腎症)
細い血管(毛細血管)が集中する場所に起こりやすいのが「三大合併症」です。神経・網膜(目)・腎臓の順に症状が現れやすいことから、頭文字をとって「し・め・じ」と呼ばれることもあります。
三大合併症が生活に与える影響を以下の表にまとめました。
| 影響を受ける場所 | 合併症 | 起こりうること |
|---|---|---|
| 神経 | 神経障害 |
・手足の先がジンジンしびれる、感覚が鈍くなる ・足の傷に気づかず細菌が入り、壊疽(えそ)から足の切断に至ることもある |
| 目(網膜) | 網膜症 |
・網膜の血管が傷つき、出血や視力低下が起こる ・進行すると失明に至る可能性があり、日本の成人の失明原因の上位を占める |
| 腎臓 | 腎症 |
・血液をろ過して老廃物を排出する機能が低下する ・進行すると体内に毒素が溜まり、人工透析なしでは生命を維持できなくなる |
特に腎症は、自覚症状がないまま進行しやすいため注意が必要です。65歳以上の高齢者のうち4人に1人が慢性腎臓病を抱えています。背景には糖尿病や高血圧が深く関わっていると報告されています。(※2)
いずれの合併症も初期段階では症状が現れにくいため、症状が出る前に血糖値をコントロールしましょう。
②心筋梗塞・脳梗塞
細い血管だけでなく、心臓や脳へ血液を送る太い血管も糖尿病の影響を受けます。
高血糖の状態は血管の内壁を傷つけ、悪玉コレステロールなどが溜まりやすい環境を作ります。いわゆる、血管が硬く狭くなってしまう「動脈硬化」です。糖尿病の人は健康な人と比べて、若いうちから速いスピードで動脈硬化が進行するとされています。
動脈硬化が心臓の血管(冠動脈)で起これば心筋梗塞、脳の血管で起これば脳梗塞と、命に関わる病気を引き起こしかねません。心筋梗塞や脳梗塞は突然発症し、一命をとりとめても麻痺や心機能の低下などの後遺症が残る場合があります。
糖尿病の治療の目的は、血糖値を下げることだけではありません。血圧やコレステロール値もあわせて管理し、動脈硬化の進行を抑えて深刻な病気を防ぎましょう。
健康診断で糖尿病が疑われた場合に実施する検査

健康診断は、糖尿病の疑いがある人を見つけ出すための「ふるい分け検査」です。異常を指摘された場合は医療機関で精密検査を受け、糖尿病かどうか、どの程度の状態なのかを評価します。
医療機関では、主に以下の3つの検査を実施します。
- 問診
- 血液検査
- 尿検査
①問診
問診は、診断や治療方針を決めるための重要な情報収集の場です。対話を通して体の状態や生活背景を確認し、一人ひとりに合った治療計画の手がかりにします。
糖尿病の検査で行われる問診の主な質問内容を以下の表にまとめました。
| 質問内容 | 具体例 |
|---|---|
| 現在の自覚症状 |
・のどの渇き ・トイレの回数の増加 ・急な体重減少 ・疲れやすさ |
| 血縁者の病歴(家族歴) |
・両親や兄弟姉妹に糖尿病の人がいるか |
| 生活習慣 |
・食事の内容や時間 ・運動の頻度 ・喫煙、飲酒の状況 |
| 病歴・服薬状況 |
・過去にかかった病気 ・服用中の薬やサプリメント |
これらの情報を組み合わせて、糖尿病のリスクや隠れた原因を探ります。
②血液検査
血液検査では、健康診断の数値を再確認し、確定診断のための詳しい検査を行います。空腹時血糖値やHbA1cを再度測定するほか、「75g経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)」を行うことがあります。OGTTは、空腹の状態でブドウ糖液を飲み、その後の血糖値の変化を時間ごとに追跡する検査です。
OGTTでは、健康診断の空腹時血糖値だけでは見つけにくい「食後高血糖(隠れ糖尿病)」や、糖尿病の一歩手前の「境界型」も捉えられます。
「まだ大丈夫だろう」という自己判断は禁物です。精密検査でご自身の体の状態を正しく知ることが、健康を守る第一歩となります。
③尿検査
尿検査は、血糖コントロールの状態と合併症の兆候を早期に捉えるための検査です。主に、尿の中に糖やたんぱく質が漏れ出ていないかを調べます。
尿糖と尿たんぱくでわかることを以下の表にまとめました。
| 項目 | 体内で起きていること | わかること |
|---|---|---|
| 尿糖 | 血糖値が一定のレベルを超えると、腎臓が糖を再吸収しきれず尿にあふれ出る | 血糖値が高い状態にあるサインになる |
| 尿たんぱく(尿中アルブミン) | 腎臓のフィルター機能がダメージを受けると、微量なたんぱく質(アルブミン)が尿に漏れ出る | 糖尿病腎症の早期発見の手がかりになる |
早い段階で異常を発見して治療を始めることが、人工透析への進行を防ぐ鍵となります。
健康診断で糖尿病が疑われたら自分でできること
健康診断で糖尿病の疑いを指摘されたら、まず医療機関を受診しましょう。そのうえで、医師の指導のもと生活習慣を見直すことが、血糖コントロールの改善につながります。
自分で取り組める改善策は、以下の3つです。
- 食生活を見直す
- 適度な運動を習慣化する
- 睡眠不足を改善する
自己判断で生活改善だけで済ませると、かえって病状を進行させかねないため避けましょう。
①食生活を見直す
食生活の見直しは、血糖コントロールの基本です。日々の食事の工夫が、血糖値の安定につながります
意識したい4つのポイントを以下の表にまとめました。
| ポイント | 具体的な方法 |
|---|---|
| 食べる順番は「野菜」から | 野菜・きのこ・海藻→たんぱく質→炭水化物の順に食べ、食後の血糖値の急上昇を穏やかにする |
| 早食いと寝る前の食事を避ける | 一口30回を目安によく噛み、就寝2時間前までに食事を終える |
| 主食・主菜・副菜をそろえる | ごはんなどの主食、肉・魚・卵・大豆製品の主菜、野菜中心の副菜を毎食そろえる |
| 間食の内容を見直す | 清涼飲料水や甘いお菓子を控え、ナッツやヨーグルトなど糖質の少ないものを選ぶ |
「早食い」や「就寝前の食事」の習慣は、糖尿病を含むメタボリックシンドロームの発症リスクを高めると報告されています。(※3)4つのポイントを意識して、血糖値の急上昇を防ぎましょう。
②適度な運動を習慣化する
運動によって血液中のブドウ糖が筋肉で消費されるため、食後の血糖値上昇を抑えられます。継続すると、インスリンが効きやすい体質に変化していきます。
血糖コントロールの改善のために取り入れたい2種類の運動を以下の表にまとめました。
| 運動の種類 | 例 | ポイント |
|---|---|---|
| 有酸素運動 |
・ウォーキング ・軽いジョギング ・水泳 |
少し息が弾む程度の早歩きから始め、1日合計30分を目標に継続する |
| 軽い筋トレ |
・スクワット ・腕立て伏せ |
筋肉量を維持・増加させ、血糖値が上がりにくい体質をつくる |
なかでも少し息が弾む程度の「早歩き」は、メタボリックシンドロームの発症を抑える保護因子になると示されています。運動は、血糖値が上がりやすい食後1時間ごろに行うと、上昇を抑えやすくなります。
③睡眠不足を改善する
睡眠不足は、血糖コントロールを妨げる要因です。睡眠時間が不足すると食欲を増進させるホルモンが増え、インスリンの効きを悪くするストレスホルモン(コルチゾール)の分泌も促されます。
質の高い睡眠のために意識したい習慣を以下の表にまとめました。
| 習慣 | 理由 |
|---|---|
| 毎日同じ時間に起きて朝日を浴びる | 体内時計がリセットされ、睡眠ホルモン(メラトニン)の分泌が促される |
| 就寝前のスマートフォンやPC操作を控える | ブルーライトは脳を覚醒させ、メラトニンの分泌を抑えてしまう |
| 快適な寝室環境を整える | 静かで暗い空間や、快適な温度・湿度が深い眠りにつながる |
これらの習慣で体内リズムを整え、血糖値の安定につなげましょう。
まとめ
健康診断で糖尿病の疑いを指摘されたら、自覚症状がなくても放置せず、まず医療機関を受診しましょう。
高血糖の状態は、知らないうちに全身の血管を傷つけます。放置すると、失明や人工透析につながる三大合併症や、心筋梗塞・脳梗塞のリスクを高めかねません。
特にご高齢の方や、高血圧などほかの病気がある場合は、血糖コントロールがより重要になります。高齢で高血圧のある方が糖尿病を合併すると、身体機能や認知機能が低下し、虚弱(フレイル)な状態に陥りやすいと示唆されています。(※4)
検査結果に不安を感じることもあるかもしれません。まずはご自身の状態を知り、必要に応じて医師と相談しながら対策を考えていきましょう。
東坂戸クリニックでは、日本糖尿病学会専門医による診療に加え、管理栄養士や糖尿病療養指導士と連携したチーム医療を行っています。血糖値やHbA1cが気になる方、健診で異常を指摘された方は、お気軽にご相談ください。
参考文献
- Zhihui Guo, Shouling Wu, Mengyi Zheng, Pengfei Xia, Qiuyun Li, Qing He, Zhengqiang Song. Association of impaired fasting glucose with cardiometabolic multimorbidity: The Kailuan study. J Diabetes Investig,2025,16,1,p.129-136.
- Arisa Kobayashi, Keita Hirano, Tadahisa Okuda, Tatsuyoshi Ikenoue, Takashi Yokoo, Shingo Fukuma. Estimating the prevalence of chronic kidney disease in the older population using health screening data in Japan. Clin Exp Nephrol,2025,29,3,p.276-282.
- Atsushi Takahashi, Fumikazu Hayashi, Tetsuya Ohira, Michio Shimabukuro, Akira Sakai, Masaharu Maeda, Mitsuaki Hosoya, Junichiro J. Kazama, Koichi Hashimoto, Shiho Sato, Hironori Nakano, Masanori Nagao, Kanako Okazaki, Hitoshi Ohto, Seiji Yasumura, Hiromasa Ohira. Impact of Changes in Lifestyle and Psychological Factors on the Incidence of Metabolic Syndrome after the Great East Japan Earthquake: Follow-up of the Fukushima Health Management Survey. J Atheroscler Thromb,2025,32,3,p.345-355.
- Jung-Yeon Choi, Hae-Young Lee, Ju-Hee Lee, Youjin Hong, Sue K. Park, Dong Ryeol Ryu, Jang Hoon Lee, Seokjae Hwang, Kye Hun Kim, Sun Hwa Lee, Song-Yi Kim, Jae-Hyeong Park, Sang-Hyun Kim, Hack-Lyoung Kim, Jung Hyun Choi, Cheol-Ho Kim, Myeong-Chan Cho, Kwang-Il Kim. Characteristics According to Frailty Status Among Older Korean Patients With Hypertension. J Korean Med Sci,2024,39,10,e84.