2026年10月01日

毎日の指先穿刺による血糖測定や、思うように改善しない数値に悩んでいませんか。食事や運動を工夫しても効果が見えにくく、日々の管理に難しさを感じている方も少なくありません。
この記事では、24時間自動でグルコース値を記録し「見える化」するCGM(持続グルコースモニタリング)について解説します。その仕組みやメリットに加え、保険適用や2024年4月から始まった「選定療養」という新しい選択肢まで、費用面も詳しく紹介しています。
ご自身の状況に合ったCGMの始め方がわかり、データに基づいた質の高いセルフケアを実践できるようになります。日々の努力が客観的な成果として見えることは、前向きに治療を続けるきっかけになるでしょう。
CGMとは?24時間血糖値を見える化する仕組み
CGM(持続グルコースモニタ一目瞭然リング)は、お腹や腕などの皮下に刺した細く柔らかいセンサーによって、24時間自動でグルコース値を測定し続ける医療機器です。
これまで血糖測定器で「点」として見ていた血糖値を、CGMは「線」のグラフとして捉えることができます。これにより、食事や運動、睡眠といった日々の生活が血糖値にどう影響しているのか、その全体像を「見える化」できるようになります。
血糖値の変動が「点」ではなく「線」でわかる原理
CGMのセンサーは、皮下の細胞のすき間を満たしている「間質液」という体液中のグルコース濃度を、1〜5分ごとというごく短い間隔で自動的に測定し続けます。
この連続したデータが「線」のグラフを描き出すことで、血糖値の1日の変動パターンを直感的に把握できるのです。
従来の指先穿刺による測定では、測ったその瞬間の血糖値(点)しかわかりませんでした。そのため、食事や運動の後に血糖値がどう変化したのか、あるいは寝ている間に低血糖が起きていないか、といった測定していない時間帯の動きは推測するしかありませんでした。
CGMを使うことで、こうした血糖変動の「なぜ」がグラフで一目瞭然になります。実際に、2型糖尿病の患者さんがCGMを活用することで血糖コントロールの指標であるHbA1cが有意に低下した、という複数の研究報告をまとめた解析結果もあります。血糖変動を「線」で捉えることは、より質の高い血糖管理につながるといえます。
従来の指先穿刺による血糖測定(SMBG)との違い
CGMと、指先に针を刺して測る従来の血糖自己測定(SMBG)には、測定対象や得られる情報量に大きな違いがあります。SMBGがその瞬間の血中の血糖値を「点」で捉えるのに対し、CGMは皮下の間質液のグルコース値を「線」として記録し続けます。
両者の違いを以下に整理します。
| 項目 | CGM(持続グルコースモニタリング) | SMBG(血糖自己測定) |
|---|---|---|
| 測定対象 | 皮下の間質液のグルコース値 | 血液中のグルコース値(血糖値) |
| 測定頻度 | 持続的(1〜5分ごとなど) | 測定したい時のみ(スポット) |
| 得られる情報 | 1日の変動トレンド(線グラフ) | 特定の瞬間の値(点) |
| 体への負担 | センサー装着時のみ(数日〜2週間ごと) | 測定のたびに指先を穿刺する痛み |
この違いにより、SMBGでは気づきにくかった食後の急激な血糖上昇(血糖値スパイク)や、自覚症状のない夜間低血糖なども発見しやすくなります。
ただし、CGMが測定する間質液のグルコース値は、血液中の血糖値の動きを約5〜10分遅れて反映します。そのため、急激な血糖変動が起きている時や、正確な値に基づいてインスリン投与量を調整する際には、SMBGによる実測値での確認が必要になる場合があります。
主要製品(フリースタイルリブレ・デクスコムG6)の特徴比較
CGMには、センサーに専用の機器やスマートフォンをかざして値を確認する「isCGM(FGM)」と、常に自動で値を送信し続ける「rtCGM」の2種類があります。
国内でよく使われる代表的な製品として、フリースタイルリブレ(isCGM/FGM)やデクスコムG6(rtCGM)が知られています。
それぞれの特徴を下表にまとめました。
| 特徴 | フリースタイルリブレ(isCGM/FGM) | デクスコムG6(rtCGM) |
|---|---|---|
| 値の確認 | センサーに機器をかざしてスキャン | 自動でスマートフォン等に送信 |
| アラート機能 | なし(リブレ2から搭載) | あり(高血糖・低血糖を警告) |
| 較正(指先穿刺) | 原則不要 | 不要 |
| センサー装着期間 | 最長14日間 | 最長10日間 |
フリースタイルリブレは、ご自身のタイミングで血糖変動の傾向を知りたい方に適しています。一方、デクスコムG6は、自動でデータが送られ、設定値から外れるとアラートで知らせてくれるため、無自覚性低血糖のリスクがある方や、より厳密な血糖管理を目指す方に有用です。
どちらの製品がご自身に合っているかは、ライフスタイルや血糖管理の目標によって異なります。安全かつ効果的に使用するため、日本糖尿病学会は専門の指針を定めており、医療機関ではこの指針に基づいた適切な指導が行われます。医師と相談しながら、最適な機器を選んでいきましょう。
CGMにかかる費用は?保険適用と自費診療のすべて

CGM(持続グルコースモニタリング)の費用は、「保険適用」と「自費診療」のどちらになるかで大きく変わります。
基本的にはこの2つですが、2024年からはその中間にあたる新しい選択肢も加わりました。ご自身の状況にどの選択肢が合うのか、ここで詳しく見ていきましょう。
【保険適用】対象となる方と3割負担の場合の費用目安
保険適用でCGMを使用するには、厚生労働省が定めた条件を満たす必要があり、インスリンの自己注射を1日1回以上行っている方が主な対象です。
医療機関で保険適用のCGMを利用する場合、月に1回以上の受診が基本となります。3割負担の場合、月々にかかる費用は診察料と機器の費用を合わせて、下表がひとつの目安です。
| 機器の種類 | 自己負担額(月額)の目安(3割負担) |
|---|---|
| FreeStyleリブレなど(isCGM) |
約3,500円~5,000円 ・センサー2個 ・診察料 など |
| デクスコムG6など(rtCGM) |
約10,000円~15,000円 ・センサー ・トランスミッター代 ・診察料 など |
※上記の金額はあくまで一例です。実際の費用は診察内容や処方によって変動するため、詳しくは受診されるクリニックへ直接ご確認ください。
【自費診療】費用内訳(本体・センサー・診察料)と総額
保険適用の条件に当てはまらない方でも、費用を自己負担する自費診療であれば、どなたでもCGMを利用できます。
インスリンを使用していない2型糖尿病の方、ご自身の血糖変動に関心がある健康な方、食事や運動の効果を確かめたい方などがこの方法を選ばれています。費用はクリニックが独自に設定するため、事前に確認が必要です。
【費用の内訳】
・初期費用: 読み取り用のリーダーや、データを送信するトランスミッターの購入費
・継続費用: センサー代(7日〜14日ごとに交換)、診察料、データ解析・指導料など
自費診療の場合、費用は月額20,000〜40,000円程度が目安です。FreeStyleリブレはセンサー1個7,000〜10,000円程度、デクスコムG6は月額20,000〜30,000円程度かかる場合があります。実際の費用は、使用する機器やクリニックによって異なります。
保険と自費、どちらを選ぶべきかの判断基準
CGMの利用方法は、インスリン治療の有無や使用目的によって異なります。
インスリン治療中の方は、保険適用で利用できる場合があります。一方、インスリンを使用していない2型糖尿病の方などは、2024年4月から「選定療養」により、追加料金を支払ってFreeStyleリブレ2を保険診療と組み合わせて利用できるようになりました。
健康管理やダイエット目的、対象外の機器を使用する場合は、自費診療が選択肢となります。適した方法は主治医と相談して決めましょう。
CGMセンサーの装着方法と日常生活での疑問点
CGMセンサーはご自身で簡単に装着でき、日常生活への影響も少ない設計です。しかし、初めて使う方にとっては、痛みや装着中の生活、皮膚トラブルなど、気になる点も多いでしょう。
ここでは、そうしたCGMを始める上での疑問に具体的にお答えします。
センサーの付け方と痛みはどの程度?
センサーは専用の器具(アプリケーター)を使い、ご自身でワンタッチで装着できます。痛みはほとんどなく、多くの方は指先を穿刺する従来の血糖測定よりも楽だと感じます。
【装着の手順】
1.上腕の後ろ側など、装着部位をアルコール綿で拭いて清潔にし、しっかり乾かす
2.アプリケーターを皮膚に強く押し当てる
3.カチッという音がするまでボタンを押すと、髪の毛ほどの細い針(センサーフィラメント)が自動で皮下に挿入される
装着の瞬間にチクッとした感覚を覚えることはありますが、装着後に痛みを感じることは稀です。なお、日本糖尿病学会では、CGMを安全かつ有効に活用するため、医療従事者向けのe-ラーニング受講を必須とするなど、厳格な適正使用指針を定めています。
クリニックではこの指針に基づき、丁寧な説明を行いますので、わからないことは何でもご質問ください。
装着したままお風呂や運動、睡眠は可能か
センサーは耐水性・耐久性に優れた設計のため、装着したままの入浴や運動、睡眠が可能です。いつもの生活を変えることなく、24時間の血糖変動を記録できます。
よくある皮膚トラブル(かぶれ・かゆみ)と対処法
センサーを固定する粘着テープや汗による蒸れで、かぶれやかゆみが生じることがあります。
予防するには、装着前に皮膚の汚れや皮脂を拭き取り、十分に乾かしてから貼ることが大切です。また、同じ場所への連続装着を避け、毎回少しずつ位置をずらしましょう。
かぶれやすい方は、装着前にスプレーやシートタイプの皮膚保護剤を使用する方法もあります。
CGMデータで変わる糖尿病治療とセルフケア
CGMから得られる24時間のデータは、これまでの糖尿病治療を大きく変える力を持っています。今まで勘や経験に頼らざるを得なかった血糖管理が、データに基づいた具体的なアクションへと変わるからです。
食事や運動が血糖値にどう影響するのかを「線」のグラフで客観的に知ることで、ご自身の体と向き合いながら、より質の高いセルフケアが実践できるようになります。
食後の血糖値スパイクを発見し食事改善に活かす
CGMを使うと、食後に血糖値が急上昇する「血糖値スパイク」を確認できます。自覚症状がなくても、食事による血糖値の変化をグラフで把握できるのが大きな特徴です。
例えば、「野菜から先に食べる」「ゆっくり食べる」といった工夫による変化や、白米と玄米など食品による血糖値の上がり方の違いを比較できます。
自分の血糖値が上がりやすい食事や食べ方を知ることで、日々の食生活の改善につなげられます。
夜間や無自覚の低血糖を防ぎ不安を解消する
リアルタイムCGM(rtCGM)のアラート機能は、ご自身で気づきにくい夜間や日中の低血糖を未然に防ぎ、心にのしかかる不安を軽くします。
特に就寝中の低血糖は重症化しやすく、多くの方が「夜中に低血糖になったらどうしよう」という恐怖を感じています。rtCGMは、血糖値が危険な領域に近づく前に音や振動で知らせてくれるため、事前に対処(補食など)ができます。
この安心感は、ご本人だけでなく、隣で眠るご家族にとっても大きな支えとなるでしょう。低血糖の心配が減ることで、夜はぐっすり眠れ、日中は仕事や趣味に、より集中できるようになります。
血糖コントロールの成果が見え、治療のやる気が続く
CGMは日々の努力を血糖値グラフとして「見える化」し、治療の「手応え」を感じさせてくれるため、モチベーションの維持に大きく貢献します。
数カ月に一度のHbA1cの結果は「通信簿」のようなものですが、日々の小さな頑張りまでは反映されにくいのが実情です。CGMを使えば、食事に気をつけた後や運動した後の血糖値の安定を、その日のうちに確認できます。こうした小さな成功体験の積み重ねが、治療を続ける原動力になるのです。
実際、複数の研究を統合した解析では、2型糖尿病の方がCGMを使用することで血糖コントロールの指標であるHbA1cが改善するだけでなく、血糖値の乱高下そのものが穏やかになることも報告されています。自分の頑張りが客観的なデータで報われることが、次の一歩を踏み出す力になります。
CGM導入の流れ【初診から装着まで】

当院でのCGM導入は、患者さん一人ひとりの生活や治療目標に寄り添い、ご予約から実際の装着までを3つのステップで丁寧に進めます。血糖値の「見える化」を通じて、ご自身の体と対話し、治療の納得感を高められるよう、医師と専門スタッフが二人三脚でサポートします。
ステップ1:ご予約と初診(オンライン診療も選択可)
CGMの導入は、お電話またはウェブサイトからご予約いただき、医師の診察から始まります。対面診療だけでなく、オンライン診療も選択できます。
初診では、現在の治療状況や生活習慣、血糖値のお悩みを確認し、CGMの利用方法や保険適用、自費診療などについてご説明します。
また、インスリンを使用していない2型糖尿病の方なども、「選定療養」によりFreeStyleリブレ2を利用できる場合があります。
ステップ2:ライフスタイルに合わせた機器の選択とご説明
診察内容やご希望をもとに、生活スタイルに合ったCGM機器を医師と一緒に選びます。
機器を選ぶ際は、低血糖などを知らせるアラート機能の有無、スマートフォンとの連携や操作のしやすさ、費用などを確認します。
それぞれの特徴や保険適用・選定療養・自費診療の違いを説明したうえで、無理なく続けられる機器を選択します。
ステップ3:センサー装着とスマートフォンアプリとの連携
使用する機器が決まったら、センサーを装着し、スマートフォンとの設定を行います。初めての方でも使えるよう、スタッフが操作方法を説明します。
センサーを上腕などに装着した後、専用アプリをインストールし、センサーとスマートフォンを連携します。血糖値のグラフが表示されることを確認できれば設定完了です。
あわせて、センサーが剥がれた場合や皮膚のかぶれ、入浴・運動時の注意点なども確認します。
まとめ
CGM(持続グルコースモニタリング)は、ご自身の血糖変動を「線」のグラフで捉え、データに基づいた血糖管理を可能にするツールです。
これまで見えなかった食後や睡眠中の血糖変動を把握できると、食事の工夫や治療の成果を実感でき、モチベーション維持にもつながります。2024年からはインスリン治療をしていない方も利用しやすい「選定療養」が始まり、CGMはより身近な選択肢になったといえます。
血糖値の「見える化」は、ご自身の体と向き合い、治療の納得感を高めるきっかけになります。興味を持たれた方は、一人で悩まず、まずは専門のクリニックへ気軽に相談してみてください。
参考文献
1.Efficacy and Safety of Continuous Glucose Monitoring and Intermittently Scanned Continuous Glucose Monitoring in Patients With Type 2 Diabetes: A Systematic Review and Meta-analysis of Interventional Evidence.
2.持続グルコースモニタリングデバイス適正使用指針について。
3.診療報酬の要件を満たさない糖尿病患者にもCGMが使用可能に「間歇スキャン式持続血糖測定器に係る選定療養」制度