2026年8月27日
健康診断で腎機能の低下を指摘されたものの、自覚症状がなく戸惑っていませんか。慢性腎臓病(CKD)は日本人成人に多くみられ、気づかないうちに進行する身近な病気です。
この記事では、慢性腎臓病のステージ分類や、eGFR・蛋白尿などの検査値が示す意味を解説します。進行度に応じた治療法や、腎臓を守るための食事・生活習慣のポイントもあわせて紹介します。
ご自身の腎臓の状態を正しく把握すれば、進行を遅らせるために今日からできる対策が見つかります。慢性腎臓病と向き合う第一歩を踏み出しましょう。
慢性腎臓病(CKD)とは腎機能の低下が続く状態

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きがゆっくりと低下していく腎臓病の総称です。尿にタンパクが混じるなどの腎臓の障害が3か月以上続く場合に診断されます。腎機能を示すeGFRが60mL/分/1.73㎡未満の状態が3か月以上続く場合も同様です。
腎臓は血液中の老廃物をこして尿をつくる、フィルターの役割を担う臓器です。「沈黙の臓器」と呼ばれるとおり、機能がかなり低下するまで自覚症状が出にくいのが特徴です。そのため、気づかないうちに慢性腎臓病が静かに進行しているケースが少なくありません。
日本人成人の多くが該当するといわれるほど、慢性腎臓病は誰にとっても身近な病気です。適切に対処しないと末期腎不全に至り、透析治療や腎移植が必要になることもあります。
慢性腎臓病(CKD)の主な症状
慢性腎臓病の症状は、腎機能がある程度低下するまで現れにくいのが特徴です。腎臓はダメージを受けても残った部分が働きを補うため、機能が半分近くまで落ちても無症状のことが多くあります。
慢性腎臓病の代表的な症状は以下の5つです。
①尿の異常
②むくみ
③全身の倦怠感
④息切れ
⑤皮膚のかゆみ
①尿の異常
尿の異常は、腎臓のフィルター機能に問題が起きていることを示す初期のサインです。多くは健康診断の尿検査で指摘されて初めて気づきます。
主な尿の異常を以下の表にまとめました。
| 尿の異常 | あらわれ方 | 起こるしくみ |
|---|---|---|
| 尿が泡立つ(蛋白尿) | きめ細かい泡が残り消えにくい | 漏れ出たタンパク質が界面活性剤のように働く |
| 尿の色が変わる(血尿) | 赤みや濃い茶褐色になる | 腎臓や尿路から血液が漏れ出す |
| 夜間頻尿 | 夜中に何度もトイレに起きる | 尿を濃縮する力が弱まり薄い尿が増える |
尿の異常は慢性腎臓病の重要な手がかりですが、ほかの病気が隠れている可能性もあります。気になる症状が続く場合は、かかりつけ医や専門医に相談しましょう。
②むくみ
むくみ(浮腫)は、体内の余分な水分や塩分を腎臓が排出しきれなくなることで生じます。腎機能が低下すると、足のすねや甲、まぶたに症状が現れやすくなります。
すねを指で10秒ほど押しましょう。指を離したあともへこんだ跡が残るなら、体内に余分な水分が溜まっているサインかもしれません。
むくみが起こる原因は主に以下の2つです。
| 原因 | 体内で起きていること |
|---|---|
| 水分・塩分の排出能力の低下 | 尿として出せる水分や塩分の量が減る |
| 血液中のタンパク質の減少 | アルブミンが尿へ漏れ、血管の外に水分が移動する |
むくみは心臓や肝臓の病気、薬の副作用でも起こります。むくみがあるからといって、慢性腎臓病とは限りません。
③全身の倦怠感
「疲れやすい」「体が重い」などの全身の倦怠感も、慢性腎臓病の代表的な症状です。
倦怠感を引き起こす原因は主に以下の2つです。
| 原因 | 体内で起きていること |
|---|---|
| 老廃物(尿毒素)の蓄積 | 尿毒素が神経や筋肉の働きを妨げ、だるさを招く |
| 腎性貧血 | エリスロポエチンの分泌が減り、赤血球が不足して全身が酸欠になる |
慢性腎臓病は、慢性的な炎症や尿毒素の蓄積を通じて筋肉量を減らすこと(サルコペニア)もわかっています。(※1)筋肉量の減少も、倦怠感や身体機能の低下を招く一因です。
④息切れ
息切れは、腎機能の低下に伴う腎性貧血や心不全が主な原因です。
腎性貧血が進行すると、体は慢性的な酸素不足に陥ります。それを補おうと心臓や肺が過剰に働くため、階段の上り下りや早歩きだけで息が切れてしまいます。
慢性腎臓病がさらに進行し、水分や塩分を十分に排出できなくなると、血液の量が増えて心臓に負担がかかります。その結果、肺に水が溜まったり(肺水腫)、心臓の働きが弱まったりして心不全となり、じっとしていても息苦しさを感じます。
横になると息苦しさが強くなる場合は、危険なサインです。すぐに医療機関を受診しましょう。
⑤皮膚のかゆみ
腎機能がかなり低下した段階で現れるのが、皮膚のかゆみです。単なる乾燥肌とは異なり、体の内側から湧き上がるような我慢しづらいかゆみで、夜間に強くなる傾向があります。
はっきりとした原因は解明されていませんが、以下の要因が絡み合うと考えられています。
- 尿毒素が皮膚の神経を刺激する
- カルシウムやリンのバランスが崩れ、皮膚に沈着する
- 汗腺や皮脂腺の働きが衰え、皮膚が乾燥する
皮膚のかゆみは市販のかゆみ止めでは治まりにくい傾向があります。眠れないほどのかゆみが続く場合は、皮膚科だけでなく腎臓内科の主治医にも相談しましょう。
慢性腎臓病(CKD)のステージ分類

慢性腎臓病(CKD)の進行度は、主に2つの指標を組み合わせて評価します。健康診断の結果を正しく理解するためのものさしです。
- 腎臓の働きを示すeGFR(推算糸球体濾過量)
- 腎臓のダメージを示す蛋白尿(アルブミン尿)
eGFRは、血液検査のクレアチニン値と年齢、性別から計算します。腎臓が1分間にどれくらいの血液をろ過できるかを示す数値です。健康な腎臓が働く量を基準にすると、現在の腎臓が何%くらい働いているかの目安になります。
eGFRの数値によって、慢性腎臓病はG1〜G5のステージに分類されます。健康診断の結果を手元に用意し、ご自身の腎臓が今どのステージにあるか確認しましょう。
| ステージ | eGFR(mL/分/1.73㎡) | 腎機能の状態 |
|---|---|---|
| G1 | 90以上 | 正常または高値(腎障害があればCKDと診断) |
| G2 | 60〜89 | 正常または軽度の低下 |
| G3a | 45〜59 | 軽度〜中等度の低下 |
| G3b | 30〜44 | 中等度〜高度の低下 |
| G4 | 15〜29 | 高度の低下 |
| G5 | 15未満 | 末期腎不全 |
ただし、eGFRの数値だけで慢性腎臓病のすべてがわかるわけではありません。もう一つの重要な指標が、尿検査でわかる蛋白尿です。
eGFRが現在の腎機能を示す点数だとすれば、蛋白尿は腎機能が悪化するスピードを示す危険信号です。同じステージでも、蛋白尿が多いほど腎機能は速く低下し、心筋梗塞や脳卒中のリスクも高まります。
ステージG4、G5と進行すると、腎臓は老廃物を排出しきれなくなり、影響は全身に及びます。
慢性腎臓病(CKD)の治療法
慢性腎臓病(CKD)の治療は、腎機能の低下スピードを緩やかにし、心筋梗塞や脳卒中などの合併症を防ぐことを目標とします。一度失われた腎機能を取り戻すのは難しいものの、治療を続けることで透析が必要になる時期を遅らせられます。
慢性腎臓病の主な治療法は以下の4つです。
①食事療法
②生活習慣の改善
③薬物療法
④腎代替療法
①食事療法
食事療法は、慢性腎臓病の治療の根幹となる方法です。食事を調整することで腎臓の仕事量を減らし、老廃物(尿毒素)が体に溜まるのを防ぎます。
病気の進行度や体の状態に合わせて調整する要素を、以下の表にまとめました。
| 調整する要素 | 腎臓を守るための考え方 |
|---|---|
| 塩分制限 | 日本高血圧学会は1日6g未満を推奨。だしや香辛料で薄味に慣れる |
| タンパク質制限 | 摂りすぎると腎臓が疲弊するため、進行度に応じて量を調整する |
| カリウム制限 | 血中濃度が高くなると不整脈を招くため、必要に応じて制限する |
| リン制限 | 骨がもろくなり動脈硬化も進むため、加工食品や乳製品に注意する |
近年、動物性よりも植物由来のタンパク質のほうが腎臓への負担が少ない可能性が期待されています。ただし研究段階であり、その働きは明確になっていません。(※3)
これらの食事制限は、やり方を間違えると栄養不足を招きかねません。自己判断で極端な制限はせず、医師や管理栄養士の指導のもとで行いましょう。
②生活習慣の改善
食事療法と並行して日々の生活習慣を見直すことも、腎臓の負担を減らすために欠かせません。
見直したい生活習慣は以下のとおりです。
| 生活習慣 | 腎臓への影響 |
|---|---|
| 禁煙する | 有害物質が血管を傷つけ、腎臓の細い血管の動脈硬化を進める |
| 適度な運動を続ける | 血圧や血糖値の改善、肥満の解消に役立つ |
| 市販薬やサプリメントに注意する | 一部の痛み止めが腎臓への血流を下げる |
| 十分な休養をとる | 過労やストレス、睡眠不足は血圧を上昇させる |
薬局で薬を購入する際は、腎臓病があることを医師や薬剤師に伝えましょう。日々の小さな見直しの積み重ねが、腎機能を守ることにつながります。
③薬物療法
薬物療法は、慢性腎臓病の進行を抑え、合併症を管理するために行います。慢性腎臓病そのものを治す薬はないものの、原因となる病気の治療と組み合わせることで腎臓の保護が期待できます。
慢性腎臓病で使われる主な薬を以下の表にまとめました。
| 目的 | 薬の種類 | 働き |
|---|---|---|
| 原因疾患の治療 | ACE阻害薬・ARB | 血圧を下げ、尿タンパクを減らして腎臓を保護する |
| 原因疾患の治療 | SGLT2阻害薬 | 血糖を下げるとともに腎臓を保護する |
| 合併症の管理 | 利尿薬 | むくみを改善する |
| 合併症の管理 | エリスロポエチン製剤 | 腎性貧血を改善する |
処方された薬は、腎臓を守るために欠かせないものです。働きを実感しにくくても自己判断で中断せず、医師の指示どおりに飲み続けましょう。
④腎代替療法
腎代替療法は、腎臓の機能が大きく低下し、老廃物や余分な水分を排泄できなくなった末期腎不全(ステージG5)で行う治療です。
主な治療法を以下の表にまとめました。
| 治療法 | 特徴 |
|---|---|
| 血液透析 | ・週に2〜3回、医療機関に通院する ・専用の機械で血液をろ過する ・1回あたり4時間程度かかる |
| 腹膜透析 | ・主に自宅で行う ・お腹の膜を利用して血液をきれいにする ・通院は月1〜2回程度 |
| 腎移植 | ・健康な腎臓を移植する手術 ・生体腎移植と献腎移植がある ・食事や生活の制限が緩和される |
どの治療法が合うかは、医学的な状態のほか、年齢や仕事、生活習慣、価値観によって異なります。腎機能が低下してきた段階で医師から説明を受け、家族とも相談しながら選びましょう。
慢性腎臓病(CKD)を予防する方法

慢性腎臓病(CKD)の進行を抑え、発症リスクを下げるには、腎臓に負担をかける生活習慣の見直しが欠かせません。二大原因である高血圧や糖尿病の管理が、腎臓を守る土台となります。
慢性腎臓病を予防するポイントは以下の5つです。
①塩分を控える
②適度な運動を続ける
③禁煙する
④飲酒量を控える
⑤定期的に健康診断を受ける
①塩分を控える
塩分を控えることは、血圧をコントロールし、腎臓の負担を減らす基本です。塩分を摂りすぎると、体は濃度を薄めようと水分を溜め込みます。その結果、体内を循環する血液量が増えて血圧が上昇し、腎臓の細い血管を傷つけてしまいます。
無理なく減塩を続けるための工夫は以下のとおりです。
- ラーメンやうどんの汁は飲まずに残す
- 醤油やソースは小皿に入れて「つける」
- お酢やレモン汁、香辛料で味に変化をつける
- 加工食品は栄養成分表示の「食塩相当量」を確認する
毎日の少しでもいいので意識して行動してみましょう。
②適度な運動を続ける
適度な運動は、血圧や血糖値を安定させ、肥満を解消するために役立ちます。ウォーキングや軽いジョギング、水中歩行などの有酸素運動がおすすめです。血圧を下げたり、インスリンの働きを良くしたりする作用が期待できます。
まずは少し汗ばむ程度の運動から始めましょう。
ただし、すでに腎機能が低下している場合や、心臓などに病気がある場合、運動が体に負担をかけることもあります。どの運動をどのくらい行うかは一人ひとり異なるため、始める前にかかりつけ医に相談しましょう。
③禁煙する
禁煙は、血管の健康を守り、腎機能の低下を防ぐために欠かせません。タバコに含まれるニコチンなどの有害物質は、全身の血管を収縮させて血流を悪くし、血管の壁を硬くする動脈硬化を推し進めます。
腎臓は細い血管の塊でできているため、動脈硬化の影響を直接受け、フィルター機能が低下します。
喫煙は慢性腎臓病の発症リスクを高めます。すでに慢性腎臓病がある人では、腎機能が悪化するスピードを速めるおそれもあります。自力での禁煙が難しい場合は、禁煙外来で専門家のサポートを受ける方法もあります。腎臓と全身の健康のために、今日から禁煙に踏み出しましょう。
④飲酒量を控える
アルコールの飲み過ぎは、血圧の上昇や中性脂肪の増加を招き、間接的に腎臓へダメージを与えます。血圧の上昇や中性脂肪の増加は慢性腎臓病の危険因子であり、飲酒習慣を見直すことは腎臓への負担軽減につながります。
お酒を飲む習慣がある場合、以下の点から始めましょう。
- お酒を飲まない休肝日を設ける
- 飲む量をあらかじめ決めておく
「少量なら健康に良い」とは言い切れません。ご自身の健康状態に合わせて、飲酒との付き合い方を見直しましょう。
⑤定期的に健康診断を受ける
定期的な健康診断は、自覚症状が出にくい初期の慢性腎臓病を早期発見する手段です。腎臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるとおり、機能が半分近くまで低下してもサインを出さないことが多くあります。
健康診断では、尿検査と血液検査を受けましょう。腎臓の健康状態を教えてくれる大切な指標は2つあります。尿検査でわかる蛋白尿と、血液検査のクレアチニン(Cr)値から計算されるeGFRです。
年齢に関わらず、健診で一度でも異常を指摘されたら、放置せずに医療機関を受診しましょう。
まとめ
慢性腎臓病(CKD)は自覚症状がないまま静かに進行し、eGFRの低下や蛋白尿などの検査値で評価される病気です。
慢性腎臓病が進行すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。日本人成人の多くが該当するといわれ、誰にとっても他人事ではない病気です。
健康診断で指摘された異常は、腎臓が発している大切なサインかもしれません。症状がないからと放置せず、早期に治療や生活習慣の見直しを始めることが、ご自身の腎臓を長く守る道につながります。
東坂戸クリニックでは、糖尿病専門医による診療に加え、管理栄養士や糖尿病療養指導士と連携したチーム医療を行っています。慢性腎臓病は、早期に発見し適切な治療を行うことで、腎機能の低下を抑えることが大切です。健診で腎機能の低下や尿検査の異常を指摘された方、腎臓の状態が気になる方は、ぜひ当院にご相談ください。
参考文献
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- Oluseyi Ademola Adejumo, Imuetinyan Rashida Edeki, Dapo Sunday Oyedepo, Joshua Falade, Olawale Elijah Yisau, Olanrewaju Olumide Ige, Adedayo Oluwadamilola Adesida, Hansel Daniel Palencia, Ayman Sabri Moussa, Jibril Abdulmalik, Jean Jacques Noubiap, Udeme Ekpenyong Ekrikpo. Global prevalence of depression in chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis. J Nephrol,2024,37,9,p.2455-2472.
- Kendal M Burstad, Dennis P Cladis, Gretchen N Wiese, Mary Butler, Kathleen M Hill Gallant. Effects of Plant-Based Protein Consumption on Kidney Function and Mineral Bone Disorder Outcomes in Adults With Stage 3-5 Chronic Kidney Disease: A Systematic Review. J Ren Nutr,2023,33,6,p.717-730.